各種設計資料
回路方式の説明
弊社の電流センサは、磁気比例式(オープンループ方式)、磁気平衡式(サーボ方式)、フラックスゲート方式(磁気平衡型)あり、幅広いニーズに対応した製品をご提供しております。
磁気比例式(Open loop)
L**シリーズ(**は数字)

アンペールの法則により、被測定電流が流れるとその周囲には電流に比例した大きさの磁界が発生します。感度を高めるためにその電流経路を1周するように磁性体コアを配置し、その磁性体コアのギャップ部に配置したリニア型ホール素子で磁束密度を電圧に変換します。ホール素子の出力電圧は数十mVと低いために、製品仕様の出力電圧(数V)になるようにオペアンプにより増幅調整します。被測定電流に比例した磁束密度を直接ホール素子で検出/増幅していることから磁気比例式と呼ばれ、通常の出力形式は電圧になります。電流センサの特性(精度、直線性、応答性、温度特性、高周波電流*1等)は、回路構成(磁気回路、磁気-電気変換、電気回路の増幅)の関係で他の回路方式よりも少し劣りますが、形状寸法やコストを抑えることができます。
*1:磁気比例式の内部磁性体は、計測可能電流やヒステリス誤差を改善するために珪素鋼板やパーマロイを使用しております。被測定電流の周波数が数kHzを超えるとコアの鉄損により発熱が大きくなり、内部回路等が破損する可能性があります。
磁気平衡式(Closed loop)
S**シリーズ(**は数字)

磁気平衡式は、磁性体コアの磁束密度が極めて0に近い条件で被測定電流を検出します。したがって、磁性体コアの磁束密度は、動作領域(注1)においてBHカーブの原点付近で動作し、コアの非線形性等の影響を受けにくく、高精度の電流センシングが可能です。
本方式は、磁性体コアに2次巻線(Nターン)を施しフィードバック制御により、被測定電流が生成する磁束を打ち消すように2次巻線にフィードバック電流を流します。被測定電流が生成する磁束とフィードバック電流が生成する磁束どうしが打ち消しあい、磁性体コアの磁束が限りなく0になったときに2次巻線を流れるフィードバック電流は被測定電流の1/Nとなります。磁気平衡式の電流センサはこのフィードバック電流を電流検出値として出力します。このように、磁気平衡式は、2次巻線のフィードバック電流が被測定電流に比例することを利用して電流をセンシングします。磁性体コアの磁束をゼロ平衡状態にすることから、この方式を磁気平衡式と呼びます。
(注1)高周波動作、過渡応答時には、フィードバック制御のループ利得が低下することなどから、ACCT(トランス)としての動作領域が優位となります。このような条件下では、磁性体コアに磁束が発生します。
フラックスゲート方式(磁気平衡型)
F**シリーズ(**は数字)

磁気平衡型のホール素子の代わりにプローブと呼ばれるコイルを用いたものが磁気平衡型フラックスゲート方式です。プローブコイルは高周波の交流電流によりドライブ されるために基本的に磁気的オフセットが発生せず、また、プローブコイルに極めて高い透磁率材料を使用していることから、精度及び温度安定性に非常に優れた電流センサが実現しております。通常の出力形式は磁気平衡型と同じ電流ですが、超高精度及び温度安定性を保証すべく電圧出力形式になっております。(2015年9月時点 F01~F03シリーズ)
UL508認証
タムラ製作所は下記電流センサについてUL508,CSA22.2 No.14の認証を受けております。
詳細は下記PDFを参照して下さい。
使用上の注意
<共通>
- 1センサには有極性電子部品が使用されています。接続の際電源の極性を誤ると破損しますので、ご注意ください。
- 2静電気、過電圧によってホール素子の不平衡電圧が増加し、オフセット電圧が変化する場合があります。取扱い及びアプリケーションでは充分にご注意ください。
- 3ノイズの影響を防ぐため、出力線はツイスト線かシールド線をご使用することをお奨めします。
- 4他の機器から発生する磁界により、所定の精度が得られない場合があります。装置内のセンサ配置についてご注意下さい。
- 5弊社製品(一部機種を除く)は、スペックシートの測定条件(負荷条件 , 入力電圧)にてトリミング調整しております。従って、測定条件と異なる回路条件下では、各種特性値 ( オフセット、定格出力、etc)及びその偏差が変動する可能性があります。尚、スペックシートには変動する特性項目の全てを記載しているわけではありません。
- 6貫通穴構造の製品は、貫通一次導体の位置により特性(定格出力、応答性, etc)が変動します。弊社の特性規定は、製品貫通穴と同面積の一次導体を使用したときです。
- 7スペックシートの定格電流は、設備の都合により直流電流にて規定しております。
- 8コネクタ接続型の製品は、勘合部分の端子メッキが同じものをご使用下さい。勘合部分のメッキが異金属の場合、ガルバニック腐食により不具合が発生する可能性があります。
- 9高温高湿の環境下での保存は避けて下さい。
6ヶ月以上保管される場合、はんだ付け性をご確認の上ご使用願います。(基板にはんだ付けする製品) - 10起動毎にオフセット電圧を基準値として読み込み、ゼロ点調整することを推奨します。
また、数ヶ月間の連続運転や使用環境の温度/湿度の変動が大きいことが想定される製品につきましては、アイドリング時(電流が流れていないことが明らかな場合)に定期的なゼロ点調整を推奨します。 - 11保護回路(素子、ヒューズ等)は内蔵しておりません。センサの故障モードとして短絡や開放状態等があり、短絡状態の場合には内部部品の異常温度上昇が考えられ発煙や発火につながる恐れがございます。安全上、重要な部分にご使用される場合には、保護素子や保護回路などにより適切な措置を行ってください。尚、磁気平衡式及びフラックスゲート方式(磁気平衡型)センサについては、計測電流に比例して2次側電源の消費電流が増減します。
<磁気比例式(Open loop)>
L**シリーズ(**は数字)
- 1被測定電流の周波数が高い場合には、コア材の鉄損よりコアの発熱が大きくなり、内部回路が破損する可能性があります。
その場合には、測定電流よりも定格電流が大きい製品を使用されるか、磁性体としてフェライト材料を使用している機種を選定して下さい。 - 2被測定電流が定格電流を超えると鉄芯の飽和により、被測定電流に比例した出力電圧が得られないことがあります。
<磁気平衡式(Closed loop)>
S**シリーズ(**は数字)
- 1磁気平衡方式製品(Sシリーズ)の両電源製品は、正負の両電源電圧を同時対称に印加して下さい。同時印加されない場合には、オフセット誤差が増えます。
- 2最大電流について通電時間制限があります。この時間を超えてご使用された場合、内部回路が破損する可能性があります。
- 3電流出力タイプに接続する負荷抵抗は、ご希望の出力電圧範囲にあうように精度及び温度特性の良い抵抗をご使用下さい。
- 42次側電源の消費電流は、被測定電流Ifに比例して増減します(If÷KN, KN:2次側巻数)。2次側電源の電流能力は十分に持たせて下さい。
<フラックスゲート方式(磁気平衡型)>
F**シリーズ(**は数字)
- 12次側電源の消費電流は、被測定電流に比例して増減します。2次側電源の電流能力は十分に持たせて下さい。
- 2出力電圧、リファレンス電圧には約450kHzのリップルが含まれておりますので、必要応じて外付けコンデンサを追加して下さい。
特性規定と測定方法
主な仕様特性を以下に示します。各特性は周囲温度25℃、仕様電源電圧(誤差±1%以下)を印加した状態で規定します。尚、一部の機種は、同測定条件以外で規定されるものがあります。
- 1定格電流
出力温度特性及び直線性を保証している被測定電流値を示します。
- 2飽和電流
出力理論値からのずれが5%を超える被測定電流値を示します。
- ※L18Pシリーズについては、10%です。
- 3定格出力電圧
被測定電流として定格電流を印加したときの出力電圧(出力電流)を示します。
- 4オフセット出力
被測定電流は0A時の出力電圧(出力電流)を示します。尚、製品を消磁後の値とします。
- 5出力直線性
定格電流値を最大電流とした4ポイント(25%、50%、75%、100%)の各出力電圧(出力電流)にて近似直線を求め、各ポイントの最大誤差を示します。
- ※本規定に従っていない機種については、個別データシートに記載有り。
- 6 di/dt 応答速度
被測定電流としてパルス電流を印加したときの、出力応答時間(ΔT)を示します。 なお、ΔTは入力波形 10%-出力波形の90%変化点の時間差で表します。
入力パルス電流の立ち上がり時間の関係で、大電流製品とS**シリーズについては入力波形 90%-出力波形の90%変化点の時間差とします。 - 7出力温度特性
オフセット出力を差し引いた定格出力について、25℃基準とした1℃あたりの温度変化率を示します。
- 8オフセット温度特性
オフセット出力について、25℃基準とした1℃あたりの温度変化率を示します。
- 9ヒステリシス誤差
オフセット出力と一次定格を印加後に再度0Aにした時の出力差
RoHS指令対応情報
当社は、欧州における環境規制(いわゆるRoHS、REACH)に取り組んでおります。そして、欧州RoHS指令(2011/65/EU, 2015/863/EU) に対応した電流センサを供給しています。
もし、RoHS証明書やREACH SVHCレポートが必要な際には、弊社代理店や営業部門へご相談ください。尚、製品シリーズでの発行はできかねますので、製品型番のご指定をお願い申し上げます。
対象物質
物質 | 含有量規制値 |
---|---|
カドミウム(Cd) | < 100ppm |
鉛 (Pb) | < 1,000ppm |
水銀(Hg) | < 1,000ppm |
六価クロム (Cr6+) | < 1,000ppm |
ポリ臭化(多臭素)ビフェニール(PBB) | < 1,000ppm |
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE) | < 1,000ppm |
フタル酸ジニエチルへキシル(DEHP) | < 1,000ppm |
フタル酸ブチルベンジル(BBP) | < 1,000ppm |
フタル酸ジブチル(DBP) | < 1,000ppm |
フタル酸ジイソブチル(DIBP) | < 1,000ppm |
- ※指令対象および適用除外に関しては欧州RoHS指令に準じます
対象製品
下記のカタログ製品は、RoHS指令(2011/65/EU, 2015/863/EU)対象物質を法規制値以上含有しておらず、RoHS指令を満足しております。尚、生産中止機種や新規採用の非推奨品は記載しておりませんので、製品シリーズ名が見つからない場合にはお問い合わせください。
製品シリーズ名 | 製品シリーズ名 | 製品シリーズ名 | 製品シリーズ名 |
---|---|---|---|
F01PxxxS05L | L01ZxxxS05 | L18PxxxD15AHV | S21S180D15JN |
F02PxxxS05L | L05Z800S15 | L31SxxxS05FS | S22PxxxS05(P)(M2) |
F03PxxxS05L | L06PxxxS05 | L32SxxxS05(B)FS | S23P50/100D15(M1)(M2) |
F23PxxxS05R | L07PxxxD15 | L34SxxxD15(T) | S27S300D15Y(M) |
F26PxxxS05 | L07PxxxD15S | L37SxxxS05(M)(J) | S28S500D24Z(M)(J) |
F26PxxxS05A | L07PxxxS05 | L37SxxxD15(M)(J) | S29S1T0D24Z(M)(J) |
F26P150S12 | L08PxxxD15(W)(IPV)(IPVW) | L40SxxxD15(M)(J) | S30S2T0D24Z(M)(J) |
L12P025D15 | L40SxxxD15C(M)(J) | S42S1T0D24Z(M)(J) | |
LA17PxxxS05 | L18PxxxD15 | L51SxxxD15L(M)(J) | |
LA37SxxxS05(M)(J) | L18PxxxD15-OP | L51SxxxD15(M)(J) | |
LA37SxxxS05K(M)(J) | L18PxxxS05 | L51SxxxD15C(M)(J) | |
L18PxxxS05R | L55SxxxD15 | ||
L18PxxxS12 |
- ※xxx は定格電流記号です。
注意事項
- 1本書の記載内容は、改良などにより予告なく変更することがあります。 ご使用の際には、最新の情報であることをご確認下さい。
- 2本製品は一般的な電子機器(家電製品、事務機器、情報機器、通信端末機器、計測機器、産業機器など)への使用を意図しております。極めて高度な品質及び信頼性が要求され、その製品の故障や誤動作が人命・身体に危害を及ぼす機器、装置(医療機器、輸送機器、交通信号制御機器、火災・防犯装置、航空宇宙機器、原子力制御、燃料制御、車載機器、各種安全装置など)の特定用途に使用されることを目的として設計及び製造されたものではございません。
本資料に個別に記載されている場合を除き、本特定用途に使用された場合には、お客様または第三者の損害等について当社はいかなる責任も負いかねます。 - 3当社は品質、信頼性の向上に努めておりますが、電流センサはある程度の確率で機能不具合、故障の発生は避けられません。故障の結果として、人身事故、火災事故、社会的損傷などを発生させないよう、使用者の責任において、装置やシステム上での十分な安全設計と確認を行って下さい。
- 4本書に記載されている動作例および回路例は、使用上の参考として示したもので、これらに起因する当社もしくは第三者の工業所有権、知的所有権、その他の権利の侵害問題について、当社は一切責任を負いかねます。
- 5本書に記載されている回路例、部品定数は、使用上の参考として示したものです。 使用者の責任において、諸条件を考慮して、設計、検証、判断を行って下さい。
- 6本製品は一般的な電子機器が設置される環境を意図しております。下記の例のような特殊環境下での使用を配慮した設計は行っておりませんので、このような特殊環境下で使用される場合は、使用者の責任において十分な安全性確認と信頼性確認などを行って下さい。
- 水、油、薬液、有機溶剤などの液体中での使用及びこれらがふりかかる場所での使用
- 直射日光、屋外暴露、塵埃中での使用
- 潮風、Cl2、H2S、NH3、SO2、NO2 などの腐食性ガスのある場所での使用 (一部製品は耐久性をあげております)
- 静電気、電磁波の強い環境での使用
- 本製品に可燃物を配置しての使用
- 本製品を樹脂充填で封止、コーティングしての使用
- フラックス洗浄で水または水溶性洗剤の使用
- 結露が発生する場所での使用
- 7本製品は耐放射線設計をしておりません。
- 8本製品、または本資料に記載されている技術情報を、大量破壊兵器の開発等の目的、軍事利用の目的、あるいはその他軍事用途の目的で使用しないでください。また、本製品の移動及び技術情報の提供に関しては、「外国為替及び外国貿易法」「米国輸出管理規則」等の国内外の法令を遵守し、必要な手続きを行ってください。本製品および本資料に記載されている技術情報を国内外の法令および規則により製造、使用、販売を禁止されている製品及びシステムに使用しないでください。
- 9本製品の環境適合性等の詳細につきましては、製品個別に必ず弊社営業窓口までお問合せください。本製品のご使用に際しては、特定の物質の含有・使用を規制するRoHS指令等、適用される環境関連法令を十分調査のうえ、かかる法令に適合するようにご使用ください。お客様がかかる法令を遵守しないことにより生じたお客様または第三者の損害等について、当社はいかなる責任も負いかねます。
- 10お客様の転売等により本注意事項に抵触して本製品が使用され、その使用から損害が生じた場合、当社はいかなる責任も負わず、お客様にてご負担または補償して頂きますのでご了承ください。
- 11当社の書面による事前の承諾なしに、本書の全部または一部を転載または複製することを禁じます。
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