トップメッセージ

2050年の「ありたい姿」を実現するための礎として、創業100周年を見据えた新中期経営計画に全力で取り組んでまいります。

タムラグループでは、長期ビジョン「2050ありたい姿」と第13次中期経営計画を策定し、2022年5月に発表しました。脱炭素社会実現のリーディングカンパニーとなることを目指し、サステナビリティ戦略に注力しながら、業績の拡大を図るとともに企業価値向上に取り組んでいきます。

国連グローバル・コンパクト
支持表明メッセージ


タムラグループは、国連グローバル・コンパクトの人権、労働、環境および腐敗防止の 4分野に関する10原則を引き続き支持し、推進してまいりますことを、ステークホルダー(利害関係者)の皆様方に宣言いたします。

      株式会社タムラ製作所
      代表取締役社長
      浅田 昌弘



新型コロナウイルスの影響等も踏まえ2021年度の事業環境と業績の振り返りをお願いします。

2021年度は、新型コロナウイルス感染症の流行が続いたものの、国や地域によっては行動制限等を緩和する動きが見られ、世界経済は概ね回復基調で推移しました。
当社グループが事業を行うエレクトロニクス市場においても、経済活動の回復とともに産業機械や家電関連を中心に需要も回復し、売上が伸長しました。一方で、銅・鉄・錫等の素材価格高騰の影響が、主力事業である電子部品・電子化学実装事業の両方に及び、収益を圧迫しました。顧客への販売価格改定を進めたものの、十分な利益率の改善には至りませんでした。
その結果、2021年度の当社グループの業績は、売上高は883億2,800万円(前年比19.5%増)と伸長しましたが、営業利益は15億6,400万円(同20.5%減)と減益となり、当期純損失8,400万円を計上しました。   
2022年度も、ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的なエネルギーや資源価格の高騰、インフレーションの進行、急激な為替変動など先行き不透明な状況が続いており、今後の動向を注視しているところです。



第12次中期経営計画の結果について評価と分析をお聞かせください。

第12次中期経営計画(2019~2021年度)の期間は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行によるサプライチェーンの分断、素材価格や物流・エネルギーコストの高騰など、大きな環境変化に見舞われた3年間でした。
感染防止対策と企業活動の両立が求められる厳しい状況の中で、当社はこうした変化に迅速に対応しきれず、電子部品・電子化学実装・情報機器の3事業部ともに収益性が悪化する結果となりました。そのため財務指標については、営業利益率、ROEともに、残念ながら目標未達に終わりました。
しかしその一方で、変革に向けた事業の土台作りという意味では、手ごたえのあった期間でもありました。
私が社長に就任した2019年から推進してきた“Oneタムラ”戦略では、「経営層の担当配置換え」とともに戦略的事業における事業部の連携強化を図りました。その結果、事業部の壁を越えた研究開発や営業活動が進展いたしました。また、製造拠点再編による生産最適化や、ICTを活用したDXの推進と人事制度の整備による働き方改革も進みました。さらに、マテリアリティを定義するとともに、2021年5月には温室効果ガス削減の目標値を見直すなど、サステナビリティ戦略の基盤も整備することができました。これらの成果は、次に述べる新中期経営計画の策定にも生かされています。



新たな長期ビジョン「2050ありたい姿」について策定の経緯とその趣旨について解説をお願いします。

2022年4月、当社グループは第13次中期経営計画をスタートさせると同時に、新たな長期ビジョンとして「2050ありたい姿」を制定いたしました。
長期ビジョン策定にあたっては、社外取締役も参加している「CSR経営委員会(現サステナビリティ経営委員会*)」において、創業の精神や経営理念、事業および環境・社会の課題、ステークホルダーからの要請なども踏まえて議論を重ねてきました。その結果、最終的に「世界のエレクトロニクス市場に高く評価される脱炭素社会実現のリーディングカンパニー」を、2050年における当社がありたい姿として、長期ビジョンに設定いたしました。
第13次中期経営計画の最終年度である2024年は、当社の創業100周年にあたります。また、2030年にはSDGsの目標達成年という、脱炭素社会を目指す上で重要な節目を迎えます。
さらにその先に位置する「2050ありたい姿」は、当社がサステナブルな企業として、将来にわたり成長し続けていくための大きな目標であり、第13次中期経営計画はその実現に向けた礎として、長い道のりの第一歩であると考えています。



今年度スタートした第13次中期経営計画の目標と「事業戦略」についてお聞かせください。

第13次中期経営計画では、スローガンとして「Energize the Future 100」を掲げています。これは創業100周年およびその先の「2050ありたい姿」に向けて、よりパワーアップしたタムラグループに進化するとともに、力強い素晴らしい未来を社会のために作っていきたいと考えて選んだものです。これまで“Oneタムラ”で推進してきた三位一体改革(事業戦略・働き方改革・業務改革)を引き継いだ上で、さらに大胆な変革を断行してまいります。
早期に利益率を改善して業績を立て直すことを最優先とし、最終年度の財務目標としては営業利益を60億円以上、営業利益率6%、ROE8%の必達を目指しています。
そして、中期経営計画を遂行していく上で中心となるのが、成長と効率の二本柱からなる「事業戦略」と「サステナビリティ戦略」です。このうち「事業戦略」については、次の3つを基本方針として取り組んでいきます。一つ目は、カーボンニュートラルとエネルギーに関わる分野の推進です。これまでも時代の変化をしっかり捉え、事業の大きな柱としてより研ぎ澄ませることで、さらなる成長を図ります。
二つ目は、当社が保有する素材技術を活用した製品の展開です。独自のコア技術の強みを生かすことで、エレクトロニクス産業分野における市場拡大を目指していきます。
そして三つ目が、当面の課題である電子部品事業の収益力強化で、電子化学実装事業とともに当社を支える両輪となる事業に育てていきます。そのために事業部間の壁をなくして、例えば化学材料の優れた知見を電子部品開発に生かすなど、オンリーワンの強さが発揮できる体制作りを進めてまいります。



中期経営計画における「サステナビリティ戦略」の詳しい内容について教えてください。

一方「サステナビリティ戦略」については、8項目のマテリアリティを軸に展開を進めていきます。マテリアリティ自体はすでに2021年5月に発表したものですが、このたび長期ビジョンと第13次中期経営計画を策定する過程で「CSR経営委員会(現サステナビリティ経営委員会)」と取締役会において議論を重ね、マテリアリティを一部見直すとともに新たにKPIと目標を設定しました。
その中で特に重要視しているのが、カーボンニュートラルの推進と、これまでの「働き方改革」を一歩進めた「働きがい改革」です。
カーボンニュートラルについては、2021年5月にそれまでの温室効果ガス削減目標を見直し、2030年までに2013年対比で51%以上削減することとしました。これに向けて第13次中期経営計画の最終年である2024年度までに、33%以上の削減を目標としています。
そのため自社工程の省エネによる電気使用量削減、太陽光発電設備の設置、再生エネルギーの調達に注力していきます。そして2022年度中に、国内主要5拠点の再エネ使用率100%を実現する予定です。さらに、主力である電子部品・電子化学実装事業においても、温室効果ガス削減に貢献する製品開発などを進めてまいります。
また「働きがい改革」を中心とした人材戦略についても、これまで以上に注力していきます。従来の「働き方改革」は労働時間短縮など、制度や規則の改定で対応することが中心でした。これに対し「働きがい改革」は、仕事に対するやりがいや喜び、職場における「心理的安全性」の高さ、働き方および人材の多様性など、個々人が「働きがい」が感じられるような環境を整えることで、従業員の満足度向上を図る取り組みです。
「働きがいプロジェクト」には、社長の私自身も参加しており、各事業の課題の抽出や、働きがい向上につながる解決策などについて議論を行っています。また、人権・安全教育の充実、心理的安全性プログラムの展開なども実施しています。一方、人材の多様性確保を目的に、日本国内を中心に管理職における女性比率、外国人比率、および中途採用比率の引き上げを図っています。
こうした取り組みにより、長期的な目線で「人が憧れる会社」「人が集まる会社」を目指していきます。



TCFD提言への賛同表明の背景と今後の取り組みについてご説明ください。

当社は2022年6月、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明しました。長期ビジョンや中期経営計画の説明でも触れたように、当社は脱炭素社会実現に貢献するリーディングカンパニーとして、サステナビリティを重視した事業戦略を推進しています。「気候変動が企業経営にとってリスクや機会になりうる」という認識の下、TCFD提言に基づく情報を開示いたしました。これはプライム市場上場企業として、ステークホルダーからの情報開示要請に応えるものでもあります。
サステナビリティ戦略に沿って、気候変動のリスクに適切に対応しつつ、事業拡大の機会となりうる分野に経営資源を集中することで、企業価値の一層の向上に寄与するものと期待しています。



最後にこれからの中期経営計画の展望と事業経営に対する意気込みをお聞かせください。

2022年度の第1四半期の業績は、第13次中期経営計画の初年度としては非常に良い形で推移しました。今後もこの状況を年間通して維持し続けることで、まずは2022年度の目標をクリアしたいと考えています。
また、事業部ごとの中期経営計画が実行に移されることにより、最終年度の目標営業利益である60億円を必ず達成するとともに、それ以後も常に同等以上の売上確保が可能な戦略・戦術の確立と事業体制の構築を図っていきます。さらに、前中期経営計画における課題であった利益率の向上を、確実に進めてまいります。
そして何と言っても計画推進の原動力は、従業員ひとり一人の行動です。当社では、中期経営計画の取り組みに対する理解促進と浸透を目的とした、タウンホールミーティングを実施しています。社内の食堂などに従業員に数十人ずつ集まってもらい、私が直接計画について説明した後に、質疑応答などを行います。7月に1回目を開催して以降、コロナ禍の影響で延期になっていますが、状況を見ながらできるだけ早い再開を目指し、従業員との対話を重ねてまいります。
第13次中期経営計画は、現在のところ比較的順調に遂行されています。しかし、事業環境というのは過去3年間を振り返っても分かる通り、常に激変するリスクを想定しておかねばなりません。その変化にいかに機敏に反応し、機会をとらえて素早く対応することでリスクの低減を図ることが、不確実性の時代における企業価値創出の根幹であると考えております。
ステークホルダーの皆様には、引き続き当社の企業活動に対し、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。



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